それは松之山温泉を独り占めすることが最高の贅沢だからです
ちょっと恐縮な話ですが、私は毎日温泉に入ります。休館日はお風呂を独占できます。誰も入ってきません。お湯が注ぎ込まれる音しか聞こえません。寝転ぶこともできます。あぁ~と声も出せますし歌も歌えます。泉質は日本三大薬湯、折り紙付きです。
この時間が最高なのです。最高に贅沢なのです。
ぜひともこれはお客様にも味わっていただきたい!と思ったわけです。
独り占めということは他人に気兼ねないということです
せっかくの温泉だから自由に楽しんでほしい
お風呂で一緒になった方との会話も楽しいかもしれません。でも少なからず気を遣いますよね。はたしてそれは「じょんのび」でしょうか。せっかく温泉に来たのだから、思い思いの入浴を楽しみたいですよね。一人静かに癒されるのも良し、お仲間とのおしゃべり入浴も良し、読書やスマホ(人物撮影はNG)だって良し。だって他人に迷惑をかけないのですから。
大切なパートナーと大切な時間を過ごしてほしい
今大人気なのが温泉付きの客室です。しかし当然のことながら宿泊料金が高額です。共用の貸切風呂ならば客室単位の設備投資は必要なく、宿泊料金をリーズナブルに設定できます。しかも様々なお風呂に入ることができるというメリットもあります。記念日で奮発するのももちろんアリですが、普段の思い出作りとして利用していただきたいのです。
ご家族みんなで楽しんでほしい
男女別のお風呂だと、お父さんは息子さんと、お母さんは娘さんととなるわけですが貸切風呂ならご家族全員でご入浴いただけます。小さなお子様がいらっしゃる場合は、お父さんとお母さんが交互にお子様を見ていれば、それぞれゆっくりと体を洗ったりお風呂に入ることができます。お子様から目を離すことなく安全にご入浴いただけます。
介助を可能にしたい
松之山温泉の泉質を求め療養を目的とするお客様も少なくありません。お仲間に介助が必要な方がいる場合でも貸切風呂なら一緒にご入浴いただけます。当館の場合は建物の構造上、バリアフリーや車いす対応などの設備は不可能です。貸切制にすることで少しでもバリアを軽減できればと考えました。
病気やけがで肌を見せたくない方も安心
手術後であったり、器具を装着している方も人目を気にすることなくご入浴いただけます。最近は湯あみ着もありますが、やはり松之山温泉を素肌で感じてほしいのです。
LGBTQの方も安心
男女別大浴場の場合、LGBTQ(性的マイノリティ)の方は心の性別と違う、体の性別のお風呂に入らざるを得ないことがあります。他のお客様の気持ちを考えて、入浴できない場面もあるそうです。それではせっかくの温泉を楽しむことができません。貸切風呂ならその心配は無用です。
湯守人よりちょっと一言
温泉旅館にも多様性への理解が求められています。入浴は裸になるという非常に神経を使う行為を伴います。そのストレスを解消するにはお風呂の貸切化が最適解なのは間違いありません。また自らの時間と空間を重要視する旅行のスタイルと温泉旅館の主力商品である温泉を最も適切にマッチングするのが専用風呂です。
専用温泉付客室への改装や貸切風呂の新設をする温泉旅館が増えています。この傾向は確固たるものとして今後も続いていくことでしょう。当館は2020年にお部屋をリニューアルしましたが、各部屋に温泉風呂を作ることは物理的に不可能でした。それであればお部屋からお風呂までの距離はわずかですし、貸切風呂を増やせばお部屋にお風呂があるのとそれほど変わらないのではないか…と考えました。部屋にお風呂がついているとその風呂にしか入れませんが、こうすれば貸切風呂の数だけいろいろなお風呂に入浴できて、それはそれで寧ろ面白いのではないかと。
実はお風呂の貸切化はずっと以前から考えていました。当館のお風呂は建物に沿って横並びに浴槽がありますので、新たに建築物を造らなくても脱衣室を改装することで実現できると思っていたからです。
しかし松之山温泉の客層などを考えたときに、現実的には難しい面が多いだろうと感じていました。そんな状況を幸か不幸か新型コロナウイルス感染症が一変させました。旅行は最小単位となり、お客様はホームページを通じて予め様々な情報をよく調べてお越しになるようになりました。さらには従来の貸切露天風呂へのお問い合わせや要望が非常に多くなりました。貸切化に踏み切るのは今しかないと決断しました。
お部屋の数と同じ数の貸切風呂があるのが最大の強みです。お部屋ごとに入浴いただければ、 必ずどこかのお風呂は空いていることになります。しかし一室当たりのお客様の構成は様々ですので、お部屋ごとの入浴ができない場面も出てきます。
すべてのお客様が貸切風呂を楽しんでいただくためには、お客様同士の「おたがいさま」「ゆずりあい」の気持ちが不可欠です。もちろんその気持ちはお持ちいただいていると確信していますが、尺度が人それぞれなのは致し方のない事実です。そのためある程度の基準を具体的に示すルールを設けさせていただきたいと思います。ご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。